表裏一体
表裏一体
現代社会に広く浸透している常識や価値観に対して、私たちはそのまま無条件に受け入れて良いのかという疑問を提起する視点を、この作品に込めました。これらの常識は長い歴史の中で構築され、日常生活の中で当然のように受け入れられていますが、異なる角度から見直したとき、果たして同じように捉えられるのでしょうか。この作品では特に「自殺」と「他殺」に焦点を当てています。法的には全く異なる扱いを受ける二つの行為ですが、自殺には必ず動機が存在し、その動機を意図的に作り出した人物がいる場合、それは本質的に他殺と何ら変わりがないのではないかという問いかけを行っています。また、誹謗中傷や隠蔽体質な大人の物事への対応等といった社会問題にも触れ、固定観念に囚われず、疑問を持ち続けることの重要性を伝えたいと考えています。世の中に存在する当たり前な物事やその処理方法の本質を見直していこうという訴えが一番に含まれています。
このショートムービーでは、脚本制作時に込めた想いを映像化するために、モーションとエモーションの演出に細心の注意を払い、基礎的な撮影技術を効果的に活用しました。例えば、水平や垂直のバランスを保つこと、必要に応じてそれを意図的に崩すこと、キャラクターが歩いていく方向やロケーションの選定など、全てが物語の伝達に寄与するように工夫されています。さらに、セリフ一つひとつにも細かなこだわりを込め、物語の後半では映像を舞台のように扱い、社会に訴えかけるメッセージを強調しました。
特に力を入れたのは影の演出です。本作では、人間の内面を表す場面で全て影を用い、その影と光のコントラストが物語の深みを際立たせるようにしました。意図的に影を用いない場面も取り入れることで、視覚的なコントラストを強調し、最後の最後まで作品のこだわりが一層際立つように演出しています。