マーダラー3 シベリアの地吹雪
マーダラー3 シベリアの地吹雪

人間の歴史とは、暴力と切り離せないものです。 文明の発展も、国家の形成も、その根底には必ず「戦い」が存在してきました。幸福や安寧、そして愛する人との大切な時間でさえも、暴力によって唐突に、そして理不尽に奪われてしまいます。私たちはその事実から、永遠に逃れることはできないのです。 本作『シベリアの地吹雪』は、その暴力の連鎖と、そこに生きる人間の儚さを描こうとした試みです。観客の皆さんにとって、この映画は決して快楽的なエンターテインメントではありません。むしろ、観ること自体が苦しく、痛みを伴う体験になるはずです。しかし、その痛みこそが平和の意味を問い直すために必要な感覚だと、私は信じています。 主人公の賢治は、圧倒的な力を持つ存在です。彼は人類を救うために戦っているわけではありません。彼の戦いの理由はただひとつ、親友である公紀を守るためです。 そして、公紀は何の力も持ちません。無力で、役に立たない。けれども彼は、せめて賢治の隣に立ちたいと願い、自ら戦うことを選びます。 この二人の姿こそ、本作の核心です。 強さを背負わされ、抗うことを宿命づけられた者。 無力でありながら、愛する者のために抗おうとする者。 その関係は、まるで人類の歴史そのものです。常に「力」が人を動かしてきた。しかし同時に、無力な人間の小さな祈りが、時に歴史を動かす原動力となってきた。 賢治と公紀の物語は、世界を守る英雄譚ではありません。 これは、ただ二人の少年が、それぞれのやり方で「隣に立つ」ことを選んだ記録です。彼らの血と涙と決断は、観客自身に「自分ならどうするのか」を問いかけます。 彼らが最後に辿り着く結末は、救済か、それとも完全なる終焉か。 どうか、賢治と公紀、二人の最後の戦いを見守ってください。

